LIVE
(ライヴ)

Randy Newman

Live

Mama Told Me (Not to Come)
Tickle Me
I'll Be Home
So Long Dad
Livin' Without You
Last Night I Had a Dream
I Think It's Going to Rain Today
Lover's Prayer
Maybe I'm Doing It Wrong
Yellow Man
Old Kentucky Home
Cowboy
Davy the Fat Boy
Lonely at the Top America
 

1971年
Warner Bros. Records Inc.
 

ピアノ弾きであり、詩人である。しかもひねくれている。そのひねくれ方は、「毒舌」という形をとって現れる。それがランディ・ニューマンである。

ランディはとても美しいメロディを書く。才人である。80年代以降は、活動の主軸を映画音楽に移しており、例えば「メジャー・リーグ」「バグズ・ライフ」「モンスターズ・インク」等で彼の音楽を聴くことが出来る。その一方で、彼の書く詩は時に難解で、攻撃的に響く。ウォーレン・ジヴォン等と同じく、無難に言葉をまとめるということが出来ないタイプの人間なのではないだろうか。しかし、その言葉は実際には書かれている対象に向けられているのではないのではないか、と思わせる。昔の小説に出てくる、だれかれ構わず罵り、周囲に辟易されている爺さんが実は黄金の心を持っている、そんなイメージが重なる気がしてならないのだ。 

"物凄いパーティだったぜ。 あぁ、電気をつけないでくれ。 辺りを見たくないよ。 ママは来ないほうがいいって言ってたんだ。

ママは言ってた。面白いことなんて何もないよと。窓を開けてくれ。むせるような香水の匂いで窒息しそうだし、君が吸ってるタバコの煙で死にそうだ。
窓を開けてくれよ。息をつかせてくれ。"  (Mama Told Me Not To Come/written by Randy Newman/高崎勇輝訳)

例えば、"Davy the Fat Boy"では、叙情的なメロディに載せて、ランディは切々と歌い上げる。その歌詞はと言えば、こんなものである。

"僕らは子供の頃から友達だった。 僕は彼の母親の慰めであり、彼の父親の友達だった。彼らが亡くなる時に、僕にこういい残した。
'デイビーのことをお願いね。あなたがたった一人の友達だから。'
デブのデイビー、デブのデイビー、彼は丸っこいだろう?"  (Davy the Fat Boy/written by Randy Newman/高崎勇輝訳)

西海岸生まれの彼は、自らも後に手を染める映画音楽の世界の大物を何人も親戚にもち、70年代にノスタルジックなアメリカの音楽を取り入れようとした所謂「バーバンク・サウンド」の一端を担うことになる。 しかし、このライヴではあくまでシンプルに、ピアノ一台での弾き語りに徹している。

そして、たまに彼がストレートに歌うラヴ・ソングは、実に素直に響く。

"牛乳配達の車に太陽が叩き起こされ、新聞が配達される。 地下鉄の振動が家の床を揺さぶり、僕は君の事を考えている。
また一人ぼっちの一日が始まる。 君なしで生きるのは辛いよ。

誰もが何かを持っている。そして、それを増やそうとしている。彼らは生きる理由を持っているんだ。だけども僕には何も起こらない。何も変わらない。君なしで生きるのはとても辛い。君がいなければ。"  (Living Without You/written by Randy Newman/高崎勇輝訳)

このアルバムの最後を飾るのは、後にアメリカ発売のベスト盤のタイトルにもなった"Lonely At The Top"で、デビューしたばかりの、まだヒット曲もないランディ・ニューマンは自分自身をも笑い飛ばしている。

"俺は世界中を回ってきた。どんな女も選り取りみどり。ご満悦だと思うだろ、でもそうでもない。みんな俺の名前を知ってる。でもこんなの下らんゲームさ。あぁ、トップでいるのも楽じゃないぜ。

俺のバンドの演奏を聞いてみな。客はみんな俺を観に来てる。拍手もパレードもそして金もみんな俺が稼いだんだ。 あぁ、トップでいるのは孤独なもんさ。

俺のファン共、よく聞きな。さあ、俺様を愛しても構わないぜ。あぁ、トップでいるのも楽じゃないぜ。あぁ、トップでいるのは孤独なもんさ。"
 (Lonely At The Top/written by Randy Newman/高崎勇輝訳)

この皮肉屋の面目躍如たるライヴ・アルバムは、海賊盤(ブートレッグ)の様な体裁で作られている。そこもまたランディらしいのだ。 Oh, Lonely at the top.....

 

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