Captain Fantastic and the Brown Dirt Cowboy
(キャプテン・ファンタスティック)

Elton John

Captain Fantastic & Brown Dirt Cowboy

Captain Fantastic and Brown Dirt Cowboy
Tower of Babel
Bitter Fingers
Tell Me When The Whistle Blows
Someone Saved My Life Tonight
(Gotta Get A) Meal Ticket 
Better Off Dead
Writing
We All Fall In Love Sometimes
Curtains


1975年
MCA Records
Album cover design and illustration by Alan Aldridge\Harry Willock
with Lettering help from Geoff Halpin at Bloomsbury Group

エルトン・ジョンのキャリアの中には多くの印象的なポップ・ソングが散りばめられている。
このアルバムは彼の全盛期にリリースされ、ビルボード・チャート初登場第一位という大ヒットとなったが、所謂彼のヒット・ソングをフィーチュアしたものではない。しかし、このアルバムは、派手なジャケットに象徴される彼のポップ・シンガーとしての仮面の裏の、アーティストとしての顔が覗いている名盤である。

このアルバムは、彼と彼の曲にずっと詞をつけてきた盟友バーニー・トゥピンを「キャプテン・ファンタスティック」と「ブラウン・ダート・カウボーイ」になぞらえ、彼らの歩んできた道を語っているもので、繊細なメロディに緻密なアレンジ、息の合った演奏と全てにおいてバランスの取れたもので、それはとにかく美しい。

"イエス様がやってくるみたいな話に僕らはだまされなかった。だって僕らは真っ当な生活からはぐれて、綱渡りの人生を送ってきたから。メロディと詞が手を取り合って、キャプテン・ファンタスティ ックとカウボーイはリングに上がっていった。 そしてそれは、あぁ、実に長い闘いなんだよ。

 安っぽい食事と旅ばかりの日々 チャンスにしがみつこうとするバンドには辛すぎる毎日が続く。
僕らは何回もリングにタオルを投げ込まれ、ノックアウトされた。そして僕らが沈み込んだ時に、世界の果てからキャプテン・ファンタスティックとブラウン・ダート・カウボーイがこの町にやってきたのだ。"
   (Captain Fantastic and Brown Dirt Cowboy/written by Bernie Taupin and Elton John/高崎勇輝訳)

エルトン・ジョンはビリー・ジョエル等と並び「ピアノ・マン」としてリスペクトされており、彼らの世界はピアノと唄で成立してしまいそうに思いがちだが、このアルバムではバンドとエルトンのコラボレーション に着目すべきである。ギターが、ベースが、そしてドラムとパーカッションがエルトンに寄り添い、一つのアナザー・ワールドを創り上げている。
そう、もう一度言おう。この音の世界は美しい。

エルトンとバーニーは、ツアーを続けながら曲作りに苦しみ、クスリの誘惑に陥り、そしてコマーシャリズムに毒されそうになる。「死んだ方がマシだ!」と」叫び、それでも曲を書き続ける。

"月と満天の星が夜を照らす中、僕らは曲を書き、そして僕は唄う。 何かの拍子に僕らは不思議な感覚にとらわれる。子供のような、ナイーブな気持ち。シンプルなメロディでそれを包み隠そうとするけど、でもそれはいつしか露わになる。そして僕らは皆、時に恋に陥る。

 過ぎ行く時だけがこの退屈さを流し去ることができる。負け犬の群れに入ったこともあった。
だけど僕らの作ったレコード "エンプティ・スカイ"は笑い声に満ちていた。大洪水の前の不安な人々の顔を微笑みに変えるように。

賢者曰く「今日は雨になりそうだ」 スピーカーから流れるそのひび割れた声は眠気に包まれた地下鉄の車内に転げ落ちる。
眠くて目を開けていられないから 痛む足が僕らにその価値を教えてくれる。
僕らは皆、時に恋に陥る。"
   (We ALL Fall In Love Sometimes/written by Bernie Taupin and Elton John/高崎勇輝訳)

このアルバムを創った後も、エルトンとバーニーは長い旅を続ける。時には二人の道が分かれたこともあったが、それでもまた二人で歩き始めた。 そう、メロディと詞は 未だに手を取り合っているのだ。

 

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