組曲:新創世紀(SUITE: "GENESIS")

クレジット Yoko Narahashi - Yukihide Takekawa
収録アルバム/メンバー ゴダイゴ(組曲:新創世紀) ゴダイゴ MarkI
THE WATER MARGIN (UK盤) ゴダイゴ MarkI (ゴダイゴ(新創世紀)と同テイク)
(The Huddleのみ)シングル「If You Are Passing By That Way」
(UK盤)のB面
ゴダイゴ MarkI (ゴダイゴ(新創世紀)と同テイク)
マジック・カプセル ゴダイゴ MarkIII
2007 TOKYO 新創世紀 ゴダイゴ MarkVI
コメント ゴダイゴのオリジナル曲。

ストーリー仕立ての6曲から構成される壮大な組曲で、アルバム「ゴダイゴ(新創世紀)」のB面全てを使用している(同アルバムのUK盤に相当する「The Water Margin」にも収録されている)。

組曲の中の「The Huddle(男たちの凱歌)」はイギリス発売シングル「想い出を君に託そう」のB面としてもリリースされていた。

アルバム版の録音は75年にまだタケカワユキヒデの2ndソロ・アルバムとして制作していた頃に行われており、ドラムは当時のミッキー吉野グループの原田裕臣が叩いている。

「いにしえの女王とその三人の息子達(キリスト、マホメッド、釈迦を意味している)の葛藤劇」を描いたもので、原曲はタケカワユキヒデがアマチュアの頃に書いた「The Piled Blocks」である(詩の内容は現在のものと違う)。

ゴダイゴ結成前のタケのソロライヴ(バックはミッキー吉野グループ)でもやっていたが、タケカワはこの時、自分のパートが入る前のイントロの部分で寝てしまったことがあるらしく、間一髪目が覚めて事無きを得たと「タッタ君あらわる」で語っていたことがある。75年のタケ カワ&ミッキー吉野グループのツアー「タケカワ・ユキヒデ、リサイタル 走り去るロマン」のパンフレットでもこの曲の解説が掲載されている。これによれば、タケ カワが眠ってしまった冒頭のイントロはミッキー吉野による5分位の独立したインストゥルメンタルで「BIRTH(誕生)」というタイトルが付けられていた。
「マジック・カプセル」 収録のライヴ版では、「CREATION(誕生)」の唄が始まる前に、幻想的なシンセ主体のインストをバックに組曲の粗筋のナレーションが入る。ミッキーの証言によれば、これは劇団「ミスタースリム・カンパニー」の深水龍作氏がやっているとのこと。 
79年にMarkIIIのメンバーで「サウンド・クリエーション」(東京12チャンネル)というスタジオ・ライヴ形式のTV番組に出演してこの曲を演奏した際には、このナレーションはな く、要約が画面上に表示されていた。
タケカワの75年のソロ・ツアー・パンフレットには、「新創世紀」アルバム・ライナーの解説(以下に引用)とこのナレーションの内容を足したものが記されており、これは 彼のペンによるものとなっている(後述)。

ライヴ・テイク (「マジック・カプセル」収録のもの)は、ゴダイゴ・ホーンズ(第一次)が入っておりミッキー曰く「この曲の理想形」に近いものだそうである。 ライヴではそれぞれの曲の繰り返し等を短くし、メドレーでそのまま次の曲に繋がる様にしている。 スタジオ・テイクでは女性コーラスが目立っているが、ライヴではスティーブ・フォックス、トミー・スナイダー、ミッキー等のヴォーカルがそれぞれフィーチャーされている。
全体的に言えば、ライヴ・テイクの方がスピード感があり、よりこなれている感じがするが、最後の「釈迦の歌」についてだけは、スタジオ・テイク が良いとも言われている。

放送音源としては、上述の通り、79年9月の「サウンド・クリエーション」(東京12チャンネル)で全曲通して演奏している。この時のアレンジは「マジック・カプセル」版と 大枠は同じである。「BUDDAH'S SONG(釈迦の歌)」の間奏ではミッキー吉野のシンセ・ソロを聞くことができる)。
また、スティーヴ脱退後のメンバー(MarkV)でもステージで演奏されている(しかもこの時はホーンズも入っていない)。

2007年3月の東京芸術劇場における「2007 TOKYO 新創世紀」では、この曲をモチーフに、ゴダイゴ+ジェニファー・バトン、日野賢二、ヒダノ修一等のサポートを得て、大編成のロック・オペラとして再現された。

ちなみにこの組曲は「新創世」ではなく、「新創世」である。

 

CREATION(誕生)
コメント 「今三人の子供たちが生まれました。この子たちは、人々を苦しみから救う救世主たちなのです。人々は皆それを願います。」(ライナーより。以下カッコ書きは同様。)

スタジオ・テイクは静かなピアノのアルペジオ(分散和音)で始まり、途中からダイナミックにドラム、ベース、ギター、コーラスが入り、この緩−急−緩−急の繰り返しで最後はまたピアノ(とシンセ)で静かに終る。 リード・ヴォーカルとピアノはタケカワユキヒデ。

ライヴ・テイクは深水氏のナレーションが終わると、トミーが16分で刻むハイハットとベースを中心にかなり早いテンポでmの演奏が始まり、タケカワのヴォーカルがかぶってくる。 エンディングは短いギターのソロの後そのままQUEEN'S SONGへと続く。78〜79年頃のステージではタケカワはヴォーカルのみでピアノはミッキー吉野が弾いていた。

2007年版では、まず「マジック・ペインティング」が演奏された後、市原悦子によるナレーションを経てタケカワユキヒデのピアノ弾き語りによって曲が始まる。また、ジェニファー・バトンと浅野孝己のギターでもヴォーカルのフレーズが演奏されている。

 

QUEEN'S SONG(女王の唄)
コメント 「女王が登場します。女王には恐れるものはないのです。女王は万能です。女王は、男はみんな自分に従い、自分のために生きていると豪語します。自分は人類の母で、妻で、恋人である事を言い聞かせます。そしてその最後に、誰も、自分に逆らえない事を悟します。女王は万能なのですから。」

「CREATION」とは打って変わってアップテンポの曲調。 スタジオ・テイクはタケカワのリード・ヴォーカルに女声コーラスが絡んでいる。 バックはミッキー吉野のピアノ(タケカワもピアノを弾いているらしい)の他、ギターとベースがユニゾンのリフを弾いている。スタジオ・テイクは浅野孝己のギターソロがあるが、ライヴでは省略されている。

ライヴテイクはスティーヴ・フォックスのリード・ヴォーカルにタケカワがコーラスで絡み、バッキングはホーンがメインになっていた。 ドラムはライヴの方がトミー・スナイダーの手癖が沢山出てくるフィルインがシャープにドライブしていて軍配が上がる。

スタジオ・テイクはフェード・アウトするが、ライヴではメドレー形式でLOVER'S LAMENTに繋がる様アレンジされている(繋げ方がポートピアのイントロから歌に入るところに少し似ている)。

2007年版では、タケカワユキヒデとスティーヴ・フォックスのツイン・ヴォーカルがフィーチュアされている。
スティーウのハンドマイクは今までのゴダイゴにはないヴィジュアル要素であった(ベースは日野賢二が弾いている)。

 

LOVER'S LAMENT/SACRIFICIAL BLUES (恋する男の嘆き)
コメント 「続いて女王からどうしても、逃れられない男が登場します。女王にすべてをささげるという男。それも報われない事を知りながら、そして、男は自分は犠牲者だと唄います。なぜなら、自分の命は、女王に握られているのを知っているからです。」

ブルース・タッチの曲で、 ミッキーのピアノとオルガンがフィーチャーされている。リード・ヴォーカルはタケカワユキヒデ。
タケカワのヴォーカル・スタイルはあまりソウルフルといったタイプではないので、今一つ曲の雰囲気と合っていない(女声コーラスも同様にやや浮いてる)。アレンジはライブもかなり近いが、スタジオ・テイクはミッキー 吉野お得意の転がり落ちる様なJazzyなフレーズで終るのに対し、ライヴは浅野孝己のギターソロの後でそのままMOTHER AND SONに繋がる。

2007年版では、ミッキー吉野のピアノとゴスペルのクワイアで始まり、尺八と琴によるインストでまずはメロディが奏でられる。 その後バンドが入ってきて、タケカワユキヒデ(とスティーヴ・フォックス)のヴォーカルにより歌われる)。

 

MOTHER AND SON(母と子)
コメント 「さて、先に生まれた三人の女王の息子。しかも、お気に入りの息子が育って一人前になります。息子たちは、しかし、女王のあまりにも男に対する非情さに心を痛めます。ここに親子の断絶がこうじて、初めての女王に対する反抗が始まります。女王は、子供たちに向かって、お前たちはどうしてしまったんだと唄います。親と子供たちは、互いに信頼しあっていた昔の平和な時を思いだし、でもそれは昔の事だったということをはっきりと悟ります。」

クラヴィネットのバッキングによるアップテンポのパートと、ピアノのバラードのパートの2つで構成される。この組曲は、この様に一曲の中で緩急を交互につけるパターンが多い。スタジオ・テイクでは、一度ピアノの伴奏で曲がブレイクし、その後ストリングスの伴奏で再び曲に戻ってきて最後にギターソロで終る。このギターソロの最後のカデンツァは途中で別のギターのコード弾きをかぶせて終っている。 クレジットにはないが、このギターソロのバックにはホーンが入っている。

スタジオ・テイクはタケカワのヴォーカルのみ。ライヴはリード・ヴォーカルにタケカワ以外にミッキーとトミーが入っている(”It was a rainy day〜"がミッキー、"That was a long long time ago〜"がトミー)。 エンディングのブレイクの部分は省略されて泣きの入ったギターソロの後、そのままTHE HUDDLEに繋がる。

2007年版では、ここでもタケカワユキヒデとスティーヴ・フォックスのツイン・ヴォーカルがフィーチュアされている。
この後、「憩いのひととき」が挿入される。


 

THE HUDDLE(男たちの凱歌)
コメント 「いよいよ時が来たのです。戦いの時です。男たちはみな”自分たちの力に気を付けろ、こんな世界、吹き飛ばしてしまうぞ、根こそぎ、ふるわせてしまうぞ”と喚声をあげます。そして、三人の息子、いや、三人の救世主たちは、それぞれの方法でこの世界をよくする事を誓います。」

フロアタムを陣太鼓の様に打ち鳴らす戦いの唄で、ドラムとスピーディなギターソロがカッコ良い。この様ないわゆる「タイトさよりは勢い」みたいな曲の場合は、トミー ・スナイダーの「ハシるけどドライブする」ドラムの冴え渡る部分であり、ライヴ・テイクの方がずっと良い。スタジオ・テイクはタケカワと女声コーラス、ライヴ・テイクはタケ カワとスティーヴ・フォックスのオクターブ・ユニゾンのヴォーカル。

2007年版では、「te・da・re」という和太鼓とドラムスによるソロの掛け合いによる曲が挿入され、重厚なバンド・サウンドで演奏される。ジェニファー・バトンと浅野孝己によるギター・ソロの応酬や、日野賢二とショルダー・キーボードを下げたミッキー吉野によるバトル等、ライヴならではの白熱したステージが展開され、このライヴでの白眉となった。

ちなみにこの曲は、冒頭にもある通りイギリス発売シングル「想い出を君に託そう」のB面としてもリリースされていた。

浅野孝己はファンクラブ会報27号で、この曲についてアコースティック・ギターのバッキングで力(パワー)を出すのが難しかったと語っている。

 

BUDDAHA'S SONG(釈迦の歌)
コメント 「戦いも終って、三人のうち一人、シャカの悟りの歌が流れます。彼は言います。心の平和のある生活が、世界が確かにある。目をつぶってそして見てみればいい。そうすればその世界にいられると言います。静かに、しかし、熱情的に。そして戦いのむなしさをものりこえこの組曲は終ります。」

珠玉のバラード。ミッキーのピアノ、オルガン、そして浅野孝己のメロディアスなギター・アルペジオが美しい。 浅野氏の本質はこういうセンスの良いバッキングにあると思う。 その美しさはスタジオ・テイクでより明確になっている。ヴォーカルはタケカワユキヒデ。

エンディングは、ライヴ・テイクが「Dead End」収録の「御国」のサビのメロディを弾いて最後はホーン入りで盛り上がって終るのに対し(ここは「ポートピア」のライヴでのエンディングと似ている)スタジオ・テイクはメジャー(・ペンタトニック)スケールのシンプルだが非常に美しいソロで、それこそ「静かに、しかし、熱情的に」終る。最後のロングトーンが消えていく中で、フラット・ピッキングのアコースティック・ギターと口笛の様なポルタメントのかかったシンセが静かに フェード・イン.し、またフェード。アウトしていく。 実に美しいエンディングである。

2007年版では、琴やクワイア等が随所に散りばめられ、ロック・オペラの大団円という雰囲気を醸し出している。そして組曲は、再び「マジック・ペインティング」が演奏され、幕を閉じる。

 

その他 冒頭で言及したタケの75年のタケ&ミッキー吉野グループのツアー・パンフでの曲目とコメントは次の通り。
-生命への賛歌− BIRTH(誕生)
昔、昔の話です。今のように、世界中にたくさんの国があって、いろいろな指導者のいるような時の話ではありません。世界には、一つしか国がなかったのです。そして、そこでの支配者は一人、女王、だけなのです。その女王から、今、子供が三人うまれます。しかし、その三人の子供の誕生が、新しい時代の夜明けになる事は、女王は気付きもしないのです。
-人間への賛歌- CREATION(創造)
今、三人の子供たちが生まれました。この子供たちは、人々を苦しみから救う。救世主たちなのです。人々は皆それを願います。
-女性への賛歌- QUEEN'S SONG(女王の唄)
女王が登場します。女王には恐れるものはないのです。女王は万能です。女王は、男はみんな自分に狂い、自分のために生きていると豪語します。自分は人類の母で、妻で、恋人である事を言い聞かせます。そして最後に、誰も、自分には逆らえない事を悟(諭)します。女王は万能なのですから。
-恋する男の嘆き- SACRIFICIAL BLUES(犠牲者の唄)
続いて、女王から、どうしても、逃げられない男が登場します。女王にすべてをささげるという男。それも報われないという事を知りながら、そして、男は、自分は犠牲者だと唄います。自分は死んでもいいと唄います。なぜなら、自分の命は、女王に握られているのを知っているからです。
-親子の断絶- MOTHER & CHILD(母と子)
さて、先に生まれた、三人の女王の息子。しかも、お気に入りの息子が育って一人前になります。息子たちは、しかし、女王のあまりにもの男に対する非情さに、心を痛めます。ここに親子の断絶がこうじて、初めての女王に対する反抗が始まります。女王は、子供たちに向かって、お前たちは、どうしてしまったんだと、唄います。親と子供たちは、互いに信頼しあっていた、昔の平和な時を思い出し、でもそれは昔の事だったという事を、はっきりと悟ります。
-男たちの権利の奪取- THE HUDDLE
いよいよ時が来たのです。戦いの時です。男たちはみな”自分たちの力に気をつけろ、こんな世界、吹き飛ばしてしまうぞ、根こそぎ、ふるわせてしまうぞ”と喚声をあげます。そして、三人の息子、いや、三人の救世主たちは、それぞれの方法でこの世界をよくする事を誓います。
-人生への賛歌- BUDDHA'S SONG(釈迦の歌)
戦いも終わって、三人のうちの一人、シャカの悟りの歌が流れます。彼は言います。心の平和のある生活が世界が確かにある。目をつぶって、そして見てみればいい。そうすればその世界にいられると言います。静かに、しかし、熱情的に。そして戦いのむなしさをものりこえ、これがミュージカルの主題だとも言わんばかりに唄います。....会場のみなさんが、目をつぶって、その世界が見えたと同時に、この組曲は終わります。
当時のコンサートは休憩なしの2部構成の様な感じで、第一部はアルバム(走り去るロマン)からの曲で、第二部でこの「組曲:新創世紀」を演奏していたという。

なお、このツアーパンフレットは2007年に同年3月の東京芸術劇場でのライヴ「2007 TOKYO新創世紀」がリリースされた際に、ディスクユニオンが予約特典として復刻した(併せて1976年の「ゴダイゴ(組曲:新創世紀)」発売時のチラシも復刻された)。

 

TOPへ