マジック・ペインティング(MAGIC PAINTING)

クレジット Yoko Narahashi - Yukihide Takekawa
主な音源/演奏メンバー ゴダイゴ(組曲:新創世紀) ゴダイゴ MarkII
THE WATER MARGIN (UK盤)
2007 TOKYO 新創世紀 ゴダイゴ MarkVI
コメント ゴダイゴのオリジナル曲。 リード・ヴォーカルはタケカワユキヒデ。

デビュー・アルバム「 ゴダイゴ(組曲:新創世紀)」 に収録されているが、ドラムはレコードにクレジットされている浅野良治ではなく、その前任者でミッキー吉野グループのメンバーだった原田裕臣が叩いている。

タケカワのソロ・アルバム「走り去るロマン」収録の「霧の尼僧」等、初期のタケカワの作る曲は一風変わった暗さのメロディーがあり、本人はそれを「タケカワユキヒデ怪奇シリーズ」と呼んでいたが、これもその一つである。

3拍子でヘビー・ワルツと言った感じのリズムで始まるが中間の展開部はいきなり4拍子のポップな感じになり、再び最初のリズムに戻って「Magic Painting」というサビのフレーズの繰り返しでフェードアウトする。 曲としてはまだこなれていない感じがするが、展開部のまさに絵の中の風景に飛び込んだ様な爽やかだがどこか魔法がかった感じのするアレンジは印象的である。

エンディングの高笑いはスティーヴ・フォックスによるもの。

前半に入っている「ん ぱっぱ ん ぱっぱ」という音はタケカワが弾いているメロトロンで、これにはエピソードがある。 最初 彼はメロトロンを慣れないコードで弾いていたが、途中でやめてしまった。ところがそれを知らないスティーヴ・フォックスがトラックダウンの時にこのメロトロンのトラックを入れてしまったので、タケカワの弾くメロトロンは途中でいなくなっている。これはタケがゴダイゴのファンクラブ会報34号で語っているもの。
「マジック・ペインティングにメロトロンが使われているのね。あの、ン・パッ・パッというやつです。で、あれはモーターをたしか使ってるもんでサイクルが変わると音が4度くらいずれるのね。だから同じメロトロンを大阪と東京で使うとなるとジェネレーターをかまさないといけない。ところがあの時、ずれたやつが来ちゃったらしいんだ。音が4度低いのね。ただでさえ不可思議なコードネームでしょう?いつもやってるコードなら手が覚えているから弾けるんだけど、4度上げるとなるとこれはもう至難のワザでさ(笑)しかもスタジオの中でしょ?やばいなぁっていうんでちょっと練習したんだけどやっぱりあきらめたわけ。良いか悪いかわかんないし、とりあえず入れてみようということだったしね。途中まで弾いて、いらないやってことになったんでやめちゃったわけ。それをトラックダウンしたのが三ヶ月くらい後で、僕はいなかったのね。スティーヴが立ち会ったんだけどスティーヴはそのいきさつを知らないんだな。あのころはトラックダウンと言うとスティーヴって感じでやってたわけ。−そしたら...入ってるんだよ。だいぶ後−レコードになってから気がついたんだ。「あれ?メロトロン入ってるの?」曲の途中でいなくなるんだよね(笑)それもすごく中途半端なところで。みんな最後までやってるもんだと思って(トラック)ダウンしちゃったのね。そういう恐ろしいことがありました(笑)」※

70〜80年代のライヴでの演奏等は確認されていないが、2007年3月の東京芸術劇場における「2007 TOKYO 新創世紀」では、「組曲:新創世紀」とこの曲を絡めたステージ構成になっており、この曲がオープニングとエンディングの2回に渡り演奏された。

※メロトロンは音源がテープ・レコーダーで、再生にはモーターを使用するので電源の周波数(サイクル)がピッチに影響する。イギリス製なので、電源の周波数が50Hz(ヘルツ)のものが多く、これ以外の周波数(例えばアメリカのように60Hz)で使用する場合は、サイクル・チェンジャー(コンバーター)を使って周波数を変える必要がある(周波数が違うとピッチがずれる)。日本の場合西日本が60Hz、東日本が50Hzなのだが、この時は西日本仕様のものがスタジオに届けられたのだと思われる。 タケカワは4度と語っているが、正確には短3度ずれるらしい。

 

その他 1976年にATG映画「青春の殺人者」の中で使用された (幻想の中のパーティ・シーンで使われている)。この映画の長谷川監督のインタビュー(ロック画報22号/ブルース・インターアクションズ刊)によれば、この場面は曲に合わせて映像を作るという手法をとったらしい。 当時は通常映画が出来てから一日程度でサントラをつけてしまうのだが、この時は映画を撮る前に(リリース前の「ゴダイゴ(組曲:新創世紀)」)を貰っていたので、これを元に撮り方を思いついたそうである。「『MAGIC PAINTING』が流れるところ、カメラをぐるぐる360度回して、転調するところで回想シーンに入る。プレイバックしながら撮ったんだ。そりゃ合うよな。合うように撮っているんだから(笑)」と語っている。

70〜80年代のゴダイゴのプロデューサーだったジョニー野村は、「ゴダイゴ 永遠のオデュッセイア」(1980年徳間書店刊)の中で、作詞を担当した奈良橋陽子(ジョニーの当時の奥さん)のエピソードを次のように語っている。
「冗談みたいな話だけど、(ヨーコが)家の部屋を掃除していてね、いろんなもの片付けていて、古いトランク開けたら、カナダのある画家が書いた絵が出てきたんだ。そうしたら、絵画に入りこんじゃったんだ。入ったままどこかへ行っちゃったんだよ。勝手に想像力湧かして入って行っちゃって、また我にもどってさ。それが『マジック・ペインティング』という曲なんだ。(中略)全部、そういうふうなんだ。」

 

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